子どもの口臭:医師が考える原因と対処法|症状辞典

子どもの口臭

東京歯科大学オーラルメディシン・病院歯科学講座 主任教授、東京歯科大学市川総合病院 歯科・口腔外科

松浦 信幸 先生【監修】

口臭とは吐き出す息に不快な臭いを伴う症状であり、非常に発生頻度の高いお口のトラブルの1つです。口臭は乳児から高齢者まで幅広い年代で起こり得ますが、子どもに生じる口臭は成人の口臭と原因が異なることもあります。

  • 歯茎の一部が腫れて痛み、口臭を生じるようになった
  • 慢性的な鼻づまりがあり、時折強い口臭がある
  • 運動会や発表会などの前になると体調が悪くなり、口臭を伴うことがある

これらの症状がみられた場合、原因としてどのようなものが考えられるのでしょうか。

子どもの口臭は、日常生活上の好ましくない習慣などによって引き起こされていることがあります。原因となる主な習慣とそれぞれの対処法は以下のとおりです。

口腔内は、食べかすがたまったり雑菌が繁殖したりしやすいため不衛生になりやすい部位です。口腔内が不衛生な状態が続くと、口臭の原因となります。

口腔内を清潔に保つには

お子さんの口や歯のサイズに合った歯ブラシを選択することが重要です。

毎食ごとの丁寧なブラッシングはもちろんのこと、就寝中は唾液の分泌が少なくなるため、就寝前の歯ブラシも重要です。お子さんの歯ブラシの後は、必ず磨き残しがないかのチェックと仕上げ磨きをしましょう。ブラッシングだけでは取り切れない歯の隙間の汚れなどは、デンタルフロスや歯間ブラシを使うようにしましょう。

また、たまったプラークや歯石はセルフケアのみでは落としきれないため、半年~1年に一度は歯科医院を受診してクリーニングを行うことも大切です。

子どもはささいなことで緊張やストレスを感じてしまうことがあります。その結果、交感神経が過度に緊張して唾液の分泌量が低下し、口の中が乾くことで雑菌が繁殖しやすくなるため口臭の原因になります。

緊張やストレスを和らげるには

日頃から子どもの様子をよく観察し、緊張やストレスの原因となるものがある場合には速やかに解決に導くようにしましょう。また、学業面などで子どもに過度なプレッシャーを与えないことも大切です。

子どもは水分保持能力が低く汗をかきやすいため、気づかぬ間に水分不足に陥っていることがあります。水分不足は唾液分泌の減少を引き起こし、口臭の原因となることも少なくありません。

水分不足を防ぐには

暑い時期だけでなく、乾燥した寒い時期であってもこまめに水分補給することを心がけ、必要以上の厚着はしないようしましょう。

日常生活上の対処法を講じても症状がよくならないときには、思わぬ病気が原因の可能性もあります。看過せずに、それぞれの症状に合わせた診療科を早めに受診するようにしましょう。

子どもは比較的口臭を生じやすい傾向があり、その原因は多岐にわたります。ほとんどの場合は一過性のもので次第に気にならないレベルに落ち着きますが、なかには病気が原因となって引き起こされ、治療を要するケースもあります。

子どもの口臭を引き起こす主な原因は以下のとおりです。

子どもの口臭の主な原因は、口の乾燥または以下に挙げる口のトラブルによるものがほとんどです。

口呼吸

お子さんが日常的に鼻呼吸ではなく口呼吸をしている場合、常に口の中が乾いているために細菌が繁殖しやすく、歯の周囲や歯周ポケットにプラーク(歯垢)を形成しやすい環境になっています。

プラークは、むし歯や歯肉の炎症を引き起こすばかりでなく、プラーク内の歯周病原菌が代謝の際に硫化水素やメチルメルカプタンといった臭い物質を産生するため、これが口臭の原因となります。

歯肉炎

歯と歯肉の隙間の歯周ポケットにプラークが蓄積して炎症を引き起こす病気です。

不十分なブラッシングによるプラークの蓄積が原因となり、歯肉の痛みや腫れを引き起こし、ささいな刺激で出血しやすくなることが特徴で、口臭の原因にもなります。子どもはブラッシングの技術などが未熟であることが多く、歯肉炎を発症しやすい傾向があります。

歯肉炎
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むし歯

歯の表面を覆うエナメル質や象牙(ぞうげ)質がむし歯菌(ミュータンス菌)の感染によって溶解される病気です。発症初期には自覚症状がないことも多いですが、進行すると歯の内部を走行する神経(歯髄)にまで感染が及び、痛みを引き起こすようになります。

むし歯が悪化したりむし歯の数が多くなったりすると、でこぼこになった歯の隙間に食べかすが挟まり、プラークや歯石が形成されやすくなったり、歯の神経や歯肉が化したりすることによって口臭を生じることがあります。

むし歯
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子どもの口臭は口の中だけでなく、口以外の部位に生じる病気によって引き起こされることもあります。原因となる主な病気は以下のとおりです。

副鼻腔炎

鼻腔から細菌・ウイルスが副鼻腔内(顔の骨の中にある空洞)に侵入して炎症を引き起こす病気で、通常は鼻炎咽頭炎などに後発します。副鼻腔内の粘膜に炎症が生じ、鼻づまりやドロドロした鼻水、頭重感、顔面痛などの症状を引き起こします。また、鼻水は口臭の原因になり、鼻づまりのため口呼吸となることも口臭を助長します。

副鼻腔炎
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扁桃炎

細菌やウイルスが感染することによって炎症を引き起こす病気です。子どもは扁桃(へんとう)が発達しているため、成人よりも扁桃炎を発症することが多いとされています。扁桃炎は高熱、喉の痛み、咳や痰などの症状を引き起こしますが、炎症が繰り返されると、扁桃の表面にくぼみができて(のうせん)(臭い玉)がたまり非常に強い口臭の原因となります。    

扁桃炎
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周期性嘔吐症(自家中毒症)

就学前の子どもに発症しやすく、発作的に嘔吐を繰り返す病気です。

過度の緊張やストレス、栄養不足、感染、疲労などが原因で発症します。エネルギー源となる糖分が不足するため、代わりに脂肪を分解することでエネルギーを産生します。その際に過剰なアセトン(ケトン体)が生成されます。アセトンには果物が腐敗したような独特な強い臭いがあるため、体内での生成量が増えると口臭の原因となります。

子どもの口臭は比較的よくみられる症状であるため、歯磨きを徹底するなどのセルフケアを行うのみで病院を受診する人は少ないのではないでしょうか。

しかし、子どもの口臭には思わぬ病気が潜んでいることもあり、なかには早急に治療が必要な場合もあります。口臭が長く続くときは病院を受診することをおすすめします。

特に、歯や歯茎に痛みを伴うとき、発熱や鼻水、咳などの全身症状を伴うとき、急激に頻回の嘔吐を繰り返してぐったりしているときなどはなるべく早めに病院を受診するようにしましょう。

受診に適した診療科は、口の中の症状がある場合には一般歯科や口腔外科、口以外の症状を伴う場合には耳鼻科や小児科など、それぞれの症状に合わせた診療科を受診しましょう。受診の際には、いつから口臭が生じるようになったのか、口臭の誘因、随伴する症状、現在罹患している病気や治療歴などを詳しく医師に説明することが大切です。

受診の目安

診療時間内に受診

翌日〜近日中の受診を検討しましょう。

  • 歯磨きを嫌がり、うまくできていない
  • 虫歯がある
  • 口呼吸、いびき、鼻水、咳などの症状がある
  • 歯磨きやうがいをしてもよくならない

場合によって受診を検討

気になる・困っている場合には受診を検討しましょう。

  • 歯磨きやうがいなどでよくなり、その後繰り返さない
原因の自己判断/自己診断は控え、早期の受診を検討しましょう。